映像の編集をしていると、現場では気付かなかったことに後で気付くことがあります。
再生、編集、巻き戻し。再生、編集、巻き戻し。早送り早送り。など、何度もその同じ映像を見返し、場面の詳細な雰囲気を目と耳で捉えていると、見えてくることがあるんですね。
先日の編集では、カメラマンさんのこんな一言が気になりました。
「リラックスしてくださいね」
写真撮影の際に新郎新婦さんはとても緊張されていました。緊張していると、たとえ一瞬を切り取る写真とは言え、やはり残る表情は固いものになってしまいます。映像ならば、その動きも伴うわけなのでなおさら緊張が出てしまいます。
例えば、目が泳いでいたり、顔の動きがぎこちなく早かったり。そもそも新郎新婦、2人だけの写真の時間を楽しんでいない雰囲気が、ありありと感じられてしまいます。せっかくの楽しい1日ですから、それはリラックスしていただきたいのは当然。カメラマンさんのお気持ちもわかります。
でも、緊張している人に「リラックスしてください」はどうでしょう?
芸人さんが客席のお客さんに「笑ってくださいね」と言ってるようなもんです。
上手なカメラマンさんは、お客さんとコミニケーションがズバ抜けています。
数少ない接触から、お客さんの性格を感じ、それに応じるように緊張を和らげるような対応をされます。
何気ない会話でもいいですし、自分の弱みを見せるでもいいですし、笑を取るでもいい。
お客様に何かをやらせるではなくて、お客様の中から自然なお姿を取り戻す。こういったことが、現場の自然な雰囲気を作り上げるために必要なことではないでしょうか。
映像としても、出来る限りお客さんの自然なお姿を撮りたい。そのコミニケーション、接触の方法っていうのは今でも難しく感じることがあります。
よく例えて言うのが、お客様が緊張している時、その緊張によってお客様の気持ちが外に出せない、例えば「− 1」の状態であるのであれば、私たちの接触によってそれを「0」までしてあげる。
これはご機嫌を取ると言うことではありません。「マイナスのもをプラスにする」ことでもありません。「マイナスのものを元に戻す」と言う行為だと思っています。
例えば、カメラマンさんがテンション上げて、新郎新婦がいつもにない位にテンションが上がってたとします。これは自然なお二人のお姿でしょうか?
撮影者が干渉することによって、その2人のいつもとは違う側面が誇張され生まれてしまう。
これはおそらく後で見返すときに、少し不自然なお気持ちを抱かれてしまうかもしれません。
映像としてはなおさら、その動きによって映像の中にお二人のお人柄や性格が見えてしまうものですから、嘘をつけない。なるべくいつも通りの自然体でいていただく。
これは長年やっていても難しいことですが、日々勉強と経験を繰り返し、精進していければと思っています。